
公開買付開始公告とは、買付者がTOBを行う際に公開する法定開示情報のことです。買付価格や買付条件などの詳細を公開することで、誰もが公平な条件のもとで売却判断を行えるようになります。
公開買付開始公告はTOBの実施前に行うべき重要なプロセスですが、記載内容や公告方法、その後のTOBの流れなどがやや煩雑なため、混乱する方もいるでしょう。
本記事では、公開買付開始公告の目的・内容のほか、行うタイミングなどを解説します。公告後のTOBの流れも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
公開買付開始公告とは、一定の株式を公開買付(TOB)によって取得しようとする際に、買付者が公開する法定開示情報のことです。
ここでは、公開買付開始公告の目的や背景、公開内容などを詳しく解説します。
公開買付開始公告の目的は、大きく以下の2つがあります。
投資家保護
取引の透明性の確保
公開買付開始公告の目的は、事前に買付価格や期間、予定株数などを明らかにすることで、誰もが公平な条件のもとで売却判断を行える環境を整備することです。また、情報の非対称性をなくすことで、市場の公正性を維持する役割も担っています(金融商品取引法第27条の3)。[参考1]
公開買付開始公告で明記すべき重要事項は以下のとおりです。
公開買付の目的
買付価格
買付期間
買付予定株数
買付条件
買付価格は、公開買付者である企業が主体となり、自社の戦略や買収の目的(経営権取得・事業再編など)に基づいて決定します。
市場価格にプレミアム(上乗せ分)を加えたうえで、専門家の意見や市場の需要も参考にしつつ、買収の目的や対象企業の価値を考慮して設定するのが一般的です。投資家は、公開買付開始公告の情報をもとに応募可否を判断します。
公告の内容はEDINET(金融庁の電子開示システム) においても確認でき、提出された有価証券報告書等と同様、24時間閲覧可能です。EDINETは電子化された開示制度であり、誰でも必要な情報に迅速にアクセスできます。[参考2]
公開買付開始公告は「公開買付届出書」の提出日と同日に行うのが通例です。公開買付届出書はTOBの開始に必要な書類であり、金融商品取引法に基づき、関東財務局長(内閣総理大臣)に提出されます。
公開買付開始公告の方法は以下のとおりです。
新聞への掲載
電子公告(EDINETによる開示)
買付者は投資家が公平に情報へアクセスできるよう、適切な媒体を通じて速やかに公告を行う必要があります。
公開買付開始公告を行ったあとは、実際にTOBを実施します。ここでは、公開買付開始公告後のTOBの流れをみていきましょう。
公開買付開始公告を行う際、買付者は通例として同日に、関東財務局長に宛てて「公開買付届出書」を提出しなければいけません。
公開買付届出書は紙ではなく、原則としてEDINETを通じて電子的に提出します。届出書に記載する主な内容は以下のとおりです。
買付けの目的
買付期間
買付予定株数
買付条件
買付価格
買付価格算定の基礎・経緯
買付にかかる資金
上記は、投資家が応募判断を行うための判断材料の一つとして用いられる重要な情報です。届出書の受理によって、公告内容が公式となり、法律上の枠組みに沿ってTOB手続きが進行します。
対象企業は、公開買付開始公告が行われた日から10営業日以内に関東財務局長に宛てて「意見表明報告書」を提出し、投資家へTOBに対する賛否や見解を示す義務があります。また、報告書の作成後には、その写しを直ちに買付者・金融商品取引所に提出しなければいけません。
意思表明報告書は、株主にとっても非常に重要な判断材料となるため、売主は企業価値や株主の利益に照らして慎重な検討を行い、合理的な理由を添えて意見を公表します。
買付者は応募を検討する株主に対し、あらかじめ又は買付けと同時に、公開買付説明書を交付しなければいけません。公開買付説明書には、以下の詳細を記載します。
買付けの目的
価格算定根拠
応募方法 など
公開買付説明書を交付する際は、広く公開されないこととされた事項を除き、公開買付届出書との内容が一致しているかを確認しておくことが重要です。
また、大規模TOBの場合は、IR部門やアドバイザーが株主からの問い合わせに対応できるよう、FAQや説明資料を準備しておくのが望ましいです。
公開買付期間の末日の翌日に行う公開買付けの結果の公告または公表と同日に、買付者はEDINETを通じ関東財務局長に宛てて「公開買付報告書」を提出する義務があります。公開買付報告書とは、買付けの最終的な結果を報告するための書類です。主に以下のような内容を記載します。
応募株数・買付株数の最終結果
上限・下限の成否(成立したか否か)
また、必要に応じて今後の経営方針への影響も記載します。
報告書はEDINETで開示され、投資家はインターネット上で結果を確認できます。
TOB開始後の買付中止は、原則認められていません。
ただし、やむを得ない事情が生じた場合には、限定的に中止が認められるケースがあります。撤回が認められるのは、以下のような極めて例外的な事由に限られます。
公開買付けの目的の達成に重大な支障となる事情の発生及び当該事情の発生により公開買付けの撤回を行う旨の条件を公開買付開始公告等にて付していた場合
重大な経営環境の変化があった場合
具体例としては、会社分割・合併・株式分割等の機関決定、重大な契約の終了、許認可の不取得、買付者の倒産・解散・不渡り等が挙げられます。
中止が認められる場合、買付者は公開買付期間の末日までに新聞やインターネット等で公告を行い、それと同日に関東財務局長に宛てて「公開買付撤回届出書」を提出し、TOBの撤回理由を明らかにしなければいけません。提出方法は、原則としてEDINETによる電子提出です。

公開買付公告をされた場合、既存株主は公告内容を十分に確認する必要があります。応募価格が市場価格と比べて妥当か、買付意図が自社の企業価値にどのような影響を与えるかを慎重に検討することが重要です。
TOBに応募する場合は、証券会社での所定の手続きが必要です。公告で定められた買付期間内に申し込まなければ、応募は受理されません。
また、例外的に応募後の取消が認められないケースもあるため、意見表明報告書や第三者委員会の見解などを参考にしつつ、長期的な投資方針との整合性を踏まえて総合的に判断しましょう。
公開買付開始公告は、TOB(公開買付)を実施する際に公開する法定開示情報のことです。買付者がTOBに関する重要事項を公開することで、誰もが公平な条件のもとで売却判断を行える環境を提供します。
公開買付開始公告を正しく行うためには、法律や規定を理解したうえで手続きを進めなければいけません。しかし、公開買付開始公告に関する情報はやや内容が複雑で、必要な知識を取得するのに苦戦する方もいるでしょう。
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公開買付開始公告に関する調査には、ぜひ「Legalscape」をご活用ください。

本記事に記載の情報は一般的情報であり、特定の事案への法的助言ではありません。
参考1:金融商品取引法 第27条の3 | e-Gov 法令検索
参考2:EDINET | 金融庁
吉田 修平
株式会社Legalscape コーポレート本部法務 Legal Counsel / 弁護士
2017年に弁護士登録後、インハウスローヤーに転身。金融機関で銀行法務・新規事業開発に携わり、WeWork Japan にてビジネス法務・コンプライアンス体制構築を主導。2024年3月Legalscapeに入社。法務コンプライアンスの知見をプロダクト開発に活かし、リーガルイノベーションの最前線を支える。
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