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M&Aで使う契約書の種類と記載項目を解説(サンプルあり)

M&Aで使う契約書の種類と記載項目を解説(サンプルあり)

公開日:2026年03月03日

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更新日:2026年03月03日

    M&A契約の流れは、初期検討から最終契約に至るまで、複数の書類を経て進行します。各契約書の役割と記載項目の正しい理解は、M&Aを円滑かつ安全に進める際の重要な前提の一つといえるでしょう。

    M&Aにおける合意では、契約書ごとに法的拘束力や目的が異なります。理解不足は交渉トラブルや想定外のリスクにつながるため、実務の流れに沿って整理することが重要です。

    本記事では、アドバイザリー契約書・秘密保持契約書・意向表明書・基本合意書・最終契約書の違いや位置付けについて解説します。

    M&Aを検討している経営者や実務担当者、法務・総務部門の担当者の方は、ぜひ今後の実務にお役立てください。

    1.M&A契約の流れと必要書類

    M&Aを進める際は、各段階で目的の異なる契約書や書類を締結しながら手続きを進めます。段階ごとに取り交わす書類を理解しておくことで、交渉の混乱や法的リスク防止につながるでしょう。

    M&Aの一般的な流れと、各段階で使用される主な契約書・書類は以下のとおりです。

    段階

    主な契約書・書類

    内容の概要

    準備

    アドバイザリー契約書

    M&A専門会社に仲介・助言業務を依頼する契約

    情報開示前

    秘密保持契約書(NDA)

    交渉過程で知り得た情報の外部漏えいを防止する契約

    条件提示

    意向表明書

    譲受企業が買収意向や条件を示す文書

    交渉段階

    基本合意書

    条件の大枠を整理し双方の認識を統一する書類

    最終段階

    最終契約書

    M&Aを法的に確定させるための契約書

    M&Aでは段階に応じて契約の性質が大きく異なります。特に最終契約書は、取引条件や責任の範囲を明確に定める重要な書類です。

    上記の契約書は、当事者が単独で作成するのではなく、M&A仲介会社がひな形を用意し、弁護士が内容を精査・修正する形で作成されるのが一般的です。専門家が関与することで、契約内容の抜け漏れを防ぎ、M&Aを安全に進めることができます。

    2.書類1)アドバイザリー契約書

    アドバイザリー契約書

    引用:(参考資料 7)各種契約書等サンプル|経済産業省

    アドバイザリー契約書とは、M&Aを進めるにあたり、譲渡企業または譲受企業がM&Aアドバイザーや仲介会社、会計士などの専門家と締結する契約書です。

    M&Aの実施には、法務や財務、税務など幅広い専門知識が求められ、自社だけで対応するのは容易ではありません。専門会社・専門家とアドバイザリー契約を結び、交渉や手続きの支援を受けるケースが多くみられます。

    専門家の関与によって、情報の収集・調査、スキームの立案、デューデリジェンス(DD)への助言を受けることができ、論点整理やリスク把握がしやすくなる場合があるでしょう。アドバイザリー契約の業務形態には、以下の2種類があります。

    • 仲介契約

    • FA契約

    仲介契約は、譲渡側と譲受側の双方と契約を締結し、中立・公正な立場から助言を行う形態です。構造的に利益相反のリスクが生じやすいため、中立性への配慮が求められます。一方でFA契約は、譲渡側または譲受側の一方のみと契約し、その依頼者の利益を図る立場から助言を行う形態です。

    アドバイザリー契約書には、主に業務内容や業務範囲、報酬体系、契約期間などを記載します。報酬は、成功報酬型や固定報酬型などが定められ、支払時期や算定方法も明確にしましょう。

    契約締結に際しては、専任条項の有無や、契約終了後の一定期間内に成立した取引に報酬が発生する「テール条項」などの内容を確認することが推奨されています。

    契約内容を事前に整理し、双方の役割と条件を明確にすることは、円滑なM&Aの実現につながるでしょう。

    3.書類2)秘密保持契約書(NDA)

    秘密保持契約書(NDA)

    引用:(参考資料 7)各種契約書等サンプル|経済産業省

    秘密保持契約書(NDA)とは、M&Aの交渉や検討過程で開示される情報を第三者に漏らさないことを約束する契約書を指します。M&Aでは、取引の事実や財務情報、取引先情報などが重大な機密情報に該当するため、実務では、詳細な情報を開示する前に締結されることが一般的です。

    NDAは、アドバイザーを介する場合であっても、情報のやり取りを行う当事者間で締結されることが通例です。また、買収側のみが署名する差入型が用いられるケースもあります。

    契約書では、まず秘密情報の範囲を明確に定義します。書面や電磁的記録といった形が残るものだけでなく口頭で開示される情報も含める一方で、公知情報や独自に取得・開発した情報などは秘密情報から除外するのが一般的です。

    併せて秘密情報の目的外使用や第三者への開示を禁止する義務内容、役員・従業員・専門家など例外的に開示が許される範囲を定めます。さらに、秘密保持義務の有効期間や検討終了時の情報の返還・廃棄、違反時の損害賠償責任、準拠法や管轄裁判所なども重要な記載項目です。

    NDAは、M&Aにおける情報管理の前提となる契約書といえます。

    4.書類3)意向表明書

    意向表明書は、M&Aの交渉過程において、譲受企業が譲渡企業に対してM&Aを実施する意思や希望条件を示す文書を指し、基本合意書を締結する前の段階で提出します。英語では「Letter of Intent」と呼ばれるため、LOIと表記される場合もあります。

    なお、意向表明書は通常取引条件を確定させる法的拘束力をもたない文書です。ただし、記載内容や交渉経過によっては、法的評価が問題となる場合もあります。

    意向表明書の提出は必須ではありませんが、譲受企業の本気度や取引条件の方向性を示すことで、譲渡企業に検討を進めてもらいやすくなる可能性もあるといえるでしょう。

    意向表明書の記載内容に厳密な決まりはありませんが、以下の事項を記載するのが一般的です。

    • 譲受企業概要

    • M&Aの目的

    • 想定するM&Aスキーム

    • 買収希望価格やその算定根拠 など

    買収資金の調達方法・役員や従業員の処遇・希望するスケジュール・デューデリジェンスの実施方針・独占交渉権の有無・有効期限などが盛り込まれることもあります。

    意向表明書は、交渉の方向性を定める重要な資料です。

    5.書類4)基本合意書

    基本合意書

    引用:(参考資料 7)各種契約書等サンプル|経済産業省

    基本合意書とは、M&Aの交渉が一定程度進み、買収価格や取引条件などの基本的な事項について大筋で合意した段階で締結される契約書です。交渉の途中経過を文書として整理し、当事者間の認識を一致させることを目的に作成されます。

    案件によっては、LOI(Letter of Intent)やMOU(Memorandum of Understanding)と呼ばれる場合もあります。

    基本合意書は、最終契約に先立つ位置付けの書類で、取引条件の多くについては法的拘束力をもたない形とされるのが一般的です。基本合意後に実施されるデューデリジェンスの結果や追加交渉により、取引条件が変更される可能性があるためです。

    ただし、すべての条項が拘束力をもたないわけではありません。独占交渉権や秘密保持義務などについては、法的拘束力をもたせるのが通常です。

    記載項目として、以下の事項が挙げられます。

    • M&Aの取引形態

    • 譲渡価額

    • 想定スケジュール

    • デューデリジェンスの実施方法

    • 独占交渉権の有無

    • 秘密保持に関する事項 など

    特に独占交渉権は、一定期間譲受企業のみが交渉できる権利で、譲渡企業側にとっても重要な条項です。

    6.書類5)最終契約書

    最終契約書とは、M&Aにおける正式かつ最終的な合意内容を定める契約書です。基本合意書締結後に実施されるデューデリジェンスや対象企業の分析結果を踏まえ、譲受側の意思が確定し、譲渡価額や条件について最終合意に至った段階で締結されます。

    最終契約書は当事者間の権利義務を法的に定める契約書で、所定の前提条件や条項に基づき、法的拘束力が生じるのが特徴です。

    最終契約書はM&Aのスキームによって名称が異なり、株式譲渡の場合は株式譲渡契約書(SPA)、事業譲渡の場合は事業譲渡契約書、合併の場合は合併契約書などが用いられます。

    中小企業M&Aの実務上は、株式譲渡契約書が多い傾向にあり、契約書の冒頭では、本文中で繰り返し使用される用語や概念について定義が設けられるのが一般的です。

    主な記載項目として、以下があります。

    • 譲渡対象となる株式や資産の内容

    • 譲渡価格

    • 支払方法

    • 表明保証・誓約事項

    • クロージングの前提条件 など

    加えて、クロージング日までの企業価値の変動を反映させる価格調整条項が盛り込まれることがあります。また、将来の業績に応じて対価を追加支払するアーンアウト条項や、表明保証違反に備えたエスクロー条項などが記載される場合もあるでしょう。

    さらに、表明保証や誓約事項、取引実行の前提条件、契約解除や補償に関する条項などは詳細に規定されています。

    最終契約書は、M&A成立後のトラブル防止にも直結するため、専門家の確認を受けながら慎重に作成することが重要です。

    株式譲渡に関して、詳しくは以下の記事で解説しています。ぜひ参考にしてください。

    関連記事:株式譲渡とは?買手・売手のメリット・デメリットや取引方法、流れを解説

    6-1.株式譲渡契約書

    株式譲渡契約書

    引用:(参考資料 7)各種契約書等サンプル|経済産業省

    6-2.事業譲渡契約書

    事業譲渡契約書

    引用:(参考資料 7)各種契約書等サンプル|経済産業省

    7.M&A契約に関するリサーチは「Legalscape」にお任せ

    M&A契約の流れは、アドバイザリー契約書・秘密保持契約書・意向表明書・基本合意書・最終契約書の締結の順に進んでいきます。

    各段階で用いられる契約書は、目的や法的拘束力が異なり、内容を正しく理解せずに進めると、交渉の長期化や想定外の法的リスクを招きかねません。

    条文や判例、ガイドラインを個別に調べるには時間と手間がかかるため、効率的なリサーチ環境が必要です。Legalscapeを活用すると、知りたい法情報を検索するだけでAIが瞬時に要約を提示します。

    さらに、業界最大級の法律書籍・判例・法令・ガイドラインを横断的に確認でき、過去の調査結果はブックマークして社内共有も可能です。原典や関連文献まで辿れるため、M&A契約における実務判断の精度向上に役立ちます。

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    本記事は一般的情報であり、特定の事案への法的助言ではありません。

    監修者

    吉田 修平

    株式会社Legalscape コーポレート本部法務 Legal Counsel / 弁護士

    2017年に弁護士登録後、インハウスローヤーに転身。金融機関で銀行法務・新規事業開発に携わり、WeWork Japan にてビジネス法務・コンプライアンス体制構築を主導。2024年3月Legalscapeに入社。法務コンプライアンスの知見をプロダクト開発に活かし、リーガルイノベーションの最前線を支える。

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