
取引先と業務委託契約を結ぶ際は、下請代金支払遅延等防止法(下請法)に該当するかを確認する必要があり、該当する場合は5条書類(書面)を作成し保存しなくてはいけません。
本記事では、下請法における5条書類の概要や記載項目、3条書面との違いを解説します。書類作成の意図や書き方について、理解を深めるのにお役立てください。
なお、下請法は2026年1月1日に改正され、名称が変わります。「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(中小受託取引適正化法、通称は取適法)」という名称になるため留意しましょう。
また、5条書類に該当する内容は取適法の第7条に引き継がれるため、本記事と併せて公正取引委員会の資料を参照すると安心です。[参考1]
下請法5条では、発注側である親事業者に書類作成・保存を義務付けています。書類の名称は「5条書類」です。
本章では、5条書類の概要や保存期間、電子データとする場合の対応を解説します。
下請事業者と契約や発注を行う際、親事業者は取引内容や実施状況、支払いの状況について記録を正確に作成し、一定期間保存することが必要です。下請法第5条によって定められており、第三者が客観的に見ても取引の流れを理解できるよう明文化されています。
記録が存在しないと支払遅延や条件変更の実態を把握しづらく、取引上トラブルにつながる可能性もあります。そこで、トラブルを防ぐ目的や行政機関による検査をスピーディに進める目的で、法律によって親事業者への文書作成と適切な保存が求められているのです。[参考2]
下請法に基づき、5条書類の保存義務は、記録が完了した日から2年間です。
ただし、2年後に即座に破棄して良いわけではありません。税法や会社法など他の法律において、発注書や契約関連書類は、より長い期間(7年・10年)の保存義務が課されています。また、トラブル発生時の証拠としても役立つため、実務上も2年以上の一定期間は保存すると安心です。
下請法だけでなく複数の法令を踏まえたうえで、総合的に保存年数を判断しましょう。[参考3]
下請法では、5条書類の作成・保存方法について「必ず紙で作成し、紙で保存する」といった決まりは設けられていません。一定の条件を満たすことで電子データによる作成・保存が認められており、デジタル化へ移行しやすい仕組みが整えられています。
下請事業者からの承諾を得ていることが前提で、具体的には以下のような条件が課されています。
記録内容の修正・削除履歴を追跡できる
必要に応じて画面表示や紙出力が可能
記録事項を検索条件として設定し、検索できる機能がある
注文日などの範囲指定検索が可能
上記を満たしたシステムであれば、5条書類を電子データとして作成・保存しても問題ありません。
ただし実務上は、改ざんされにくい環境でファイルを管理し、電子署名やタイムスタンプを導入して証拠力を高めておく対策も別途必要です。適切な電磁的記録があれば、発注日時や納品状況の確認が迅速に行えて、トラブル時の証明としても役立ちます。
一方で、要件を満たさない保存方法では、契約の有効性自体が疑われる恐れがあるため注意しましょう。[参考3]
5条書類では、親事業者が一方的に条件を変えたり、下請代金の支払いを曖昧にしたりすることを防ぐため、細かく記載項目が規定されています。
以下17項目の記載が必須です。
下請事業者の名称(番号や記号等による記載も可)
委託を行った日(製造・修理・情報成果物・役務提供委託)
下請事業者の給付・役務提供内容
給付や役務提供を受ける期日または期間
実際に受領した給付・役務提供内容と受領日
下請事業者に対し検査を実施した場合の結果・日付・不合格の扱い
変更ややり直しをさせた場合の内容と理由
下請代金の額(算定方法記載時はその後定まった額も記載。変更時は理由と新算定方法、確定額)
下請代金の支払期日
下請代金が変更された場合の増減額と理由
支払額・支払日・支払手段
全部もしくは一部を手形払いした場合の金額・交付日・満期
全部もしくは一部を一括決済方式とした場合の金額・開始日・金融機関への支払日
全部もしくは一部を電子記録債権で支払った場合の金額・期間開始日・満期日
原材料等を有償支給した場合の品名・数量・対価・引渡し日・決済日・決済手段
全部もしくは一部の対価について代金控除があった場合の残額
遅延利息を支払った場合の金額・支払日
単に取引の事実だけを記録するのではなく、取引の発生から納品、支払いまでの一連の流れを第三者が見ても把握できるように書類を作成することが求められます。さらに、決済手段別に金額や支払日も記録しなければいけません。
なお、5条書類は下請事業者ごとにそれぞれ作成する必要があり、また相手によって記載項目を変更することは認められません。
取引の内容に関わらず、該当する項目はすべて網羅した状態で作成する必要があることを理解しておきましょう。[参考3][参考4]
5条書類を作成しなかったり、虚偽の内容で記録したりした場合は、親事業者である企業責任者だけでなく、実際に違反行為に関わった個人にも罰則が科されます。
下請法第10条では、書類作成義務に違反した親事業者の代表者はもちろん、代理人や担当社員などの従業者にも最大50万円の罰金が科されると規定されています。会社が肩代わりすれば済む問題ではなく、関係する個人に「前科」がつくため、書類を作成しないことは重大なインシデントとなり得るでしょう。
5条書類の作成および正確な保存は、企業・従業員の双方が慎重に守るべき法的な義務です。[参考2]

条件の食い違いや認識違いを防ぐため、親事業者には5条書類の他、3条書面の作成・交付が義務付けられています。
3条書面は、発注時に下請事業者へ渡す「注文明細書」のような位置づけで、発注内容・代金・支払期日など、取引条件を事前に下請事業者へ明示する役割を担う書類です。口頭や電話のみでの伝達は認められず、発注後すぐに書面として交付する必要があります。
一方で5条書類は、実際に役務提供や納品が行われた後に提供された内容や検査日、支払実績など取引の経過を詳細に記録する書類で、下請事業者への交付は不要です。ただし、親事業者は作成した書類を2年間適切に保存しなくてはいけません。
双方の書類では記載項目が重複する部分もありますが、5条書類には実際の提供日や検収結果など、事後でなければ記録が困難な事項が含まれます。
つまり、3条書面は給付や役務提供前に提示しておく書類で、5条書面は実際の取引履歴の証明となる書類です。どちらか片方が不足することは認められず、両方をそろえることでトラブル防止と取引の正当性が確保される仕組みとなっています。
3条書面の詳細は以下の記事でも解説していますので、ご確認ください。
関連記事:下請法3条書面とは?企業が知るべきポイントと基本の記載事項
下請法の5条書類は、取引の実態を客観的に証明するための重要な記録であり、親事業者は正確な書類作成と2年間の適切な保存が必要です。
発注時に下請事業者へ交付する3条書面と類似しているものの、給付内容・検査結果・支払実績など、取引後の事実を詳細に残す点が違うため、混同しないよう注意が必要です。記載事項を守らず、適切に作成・保存されない場合は、企業代表者だけでなく社員個人にも罰則が及ぶため、社内全体で法令を確認し不備のない書類作成を心がけましょう。
5条書類など取引関係書類の記載事項が法的要件を満たしているか確認する際、1点ずつ調べるのは大変です。
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本記事に記載の情報は一般的情報であり、特定の事案への法的助言ではありません。
吉田 修平
株式会社Legalscape コーポレート本部法務 Legal Counsel / 弁護士
2017年に弁護士登録後、インハウスローヤーに転身。金融機関で銀行法務・新規事業開発に携わり、WeWork Japan にてビジネス法務・コンプライアンス体制構築を主導。2024年3月Legalscapeに入社。法務コンプライアンスの知見をプロダクト開発に活かし、リーガルイノベーションの最前線を支える。
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