
株主総会の決議事項とは、企業運営に関して、株主総会で決議する事項のことです。株主総会の決議事項は主に会社法で定められており、決議方法は、法令および定款の定めに基づいて普通決議・特別決議・特殊決議のいずれかに区別されます。
株主総会決議は普通決議・特別決議・特殊決議に大別でき、決議の承認には、決議ごとに定められている定足数と決議要件を満たすことが必要です。
本記事では、株主総会の決議事項について、報告事項や取締役会の決議事項との違いを解説します。株主総会決議の種類・決議事項、株主総会決議がなされない場合のリスクなども紹介しますので、参考にしてください。
株主総会の決議事項とは、企業運営に関して、株主総会で決議する事項のことです。株主総会の決議事項は主に会社法で定められており、決議方法は、法令および定款の定めに基づいて普通決議・特別決議・特殊決議のいずれかに区別されます。
株主総会決議(普通決議・特別決議)が有効に成立するには、原則として、各決議事項について定められた定足数と決議要件を満たす必要があります。定足数は決議に必要な議決権数、決議要件は決議が可決されるための条件です。
定足数および決議要件を満たした決議は、原則として可決されたものとして扱われます。なお、決議内容によっては、ほかの機関決定を別途要することもあるため注意が必要です。
他方で株主総会決議(特殊決議)には定足数の考え方はありません。出席した株主の議決権を基準とするのではなく「総株主の頭数」や「総株主の議決権」といった、全株主を分母とする一定割合の賛成によって定められています。
株主総会の種類や開催時期・流れなどは以下の記事で解説していますので、理解を深めたい方は参考にしてください。
関連記事:株主総会とは?種類や決議事項、開催時期・流れをわかりやすく解説
取締役会とは、3名以上の取締役で構成される機関のことです。
株主総会と取締役会の決議事項の違いは、決議する内容の重要度です。株主総会は、会社法における「株式会社の最高意思決定機関」であり、法令または定款で株主総会の権限とされる事項に関する決議を行います。取締役会で決議するのは「株主総会の招集に関する決定事項」「多額の借財」「重要な財産の処分および譲受け」などです。
なお、株式会社には、設置が会社法で義務付けられている、または任意で設置している「取締役会設置会社」と、設置しない「取締役会非設置会社」があります。取締役会非設置会社の場合、株主総会では、法令上取締役の権限とされる事項を除く幅広い事項に関する決議が可能です。
一方、取締役会設置会社の場合、株主総会で決議できるのは以下2点のみのため注意しましょう(会社法第295条第1項・第2項)。[参考1]
会社法で株主総会の決議事項と定められた事項
定款で株主総会の決議事項とする旨が定められた事項
取締役会の決議事項や、取締役会設置会社・取締役会非設置会社については、以下の記事でも解説していますのでご覧ください。
関連記事:取締役会の決議事項とは?成立要件や該当事項を一覧で解説
関連記事:取締役会設置会社とは?取締役会非設置会社との違いやメリットも解説
株主総会の報告事項とは、株主総会で報告が必要な事項のことです。
株主総会の決議事項と報告事項の違いは、株主総会における承認決議の必要性です。決議事項は承認決議が必要ですが、報告事項は、原則として株主総会における承認決議を必要とせず、報告の実施で足ります。
株主総会の報告事項は「事業報告」「計算書類」の2点と会社法で定められていますが、計算書類が報告事項に該当するのは、以下の要件をすべて満たした場合です。
取締役会設置会社である
会計監査人設置会社である
以下を満たす適正な計算書類である
会計監査報告および監査役の監査報告の内容に問題がない
監査報告の通知報告期限を過ぎて監査を受けたものではない
上記を1つでも満たさない計算書類は、決議事項とみなされ、株主総会による承認が必要です(会社法第438条第2項、同法第439条)。[参考2][参考3]
株主総会の決議は、以下のとおり普通決議・特別決議・特殊決議の3種類に大別されます。
主な決議事項 | 定足数 | 決議要件 | |
|---|---|---|---|
普通決議 | ・役員の選任・解任 | 行使可能な議決権の過半数 | 出席する株主の議決権の過半数 |
特別決議 | ・事業譲渡の承認 | 行使可能な議決権の過半数 | 出席する株主の議決権の3分の2以上 |
特殊決議 | 定款変更により発行する全部の株式が譲渡制限株式になる場合など | - | 議決権の行使が可能な株主の半数以上かつ当該株主の4分の3以上 |
本章では、各決議の概要と決議事項、定足数・決議要件を詳しく解説します。
株主総会の普通決議は、会社法や定款で特別決議や特殊決議が必要と定められている事項以外の、原則的な決議方法です。
普通決議では、行使可能な議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数)、出席した株主の議決権のうち、過半数が賛成すると可決されます。普通決議の定足数と決議要件は定款による修正・排除が可能ですが、役員の選任・解任は議決権を行使できる株主の議決権ベースで3分の1以上の出席が必要です。
普通決議の決議事項は、以下のとおりです。
自己株式の取得(特定株主からの自己株式の取得を除く)
役員の選任・解任(累積投票取締役、監査等委員である取締役および監査役の解任を除く)
会社・取締役間の訴えにおける企業の代表者の選定
会計監査人の出席要求決議
剰余金の配当・処分
資本金・準備金の額の減少
ただし、取締役会非設置会社においては、法令上取締役会の専権事項とされていない事項(例:重要な財産の処分など)も株主総会の普通決議で決議可能となります(会社法第295条第1項)。[参考1]
譲渡制限株式・譲渡制限新株予約権の譲渡による取得承認
譲渡制限株式の割当
譲渡制限株式の買取人の指定
取得する取得条項付新株予約権の決定
取得条項付株式・取得条項付新株予約権の取得日
募集新株予約権の割当
新株予約権無償割当
株式分割
取締役の競業および利益相反取引の承認
代表取締役を含む代表者の選定
組織・運営・管理など、企業に関する一切の事項
特別決議は、企業経営の中で特に重要な事項や、株主に重大な影響を与える可能性がある事項の決議に適用されます(会社法第309条第2項)。[参考4]
特別決議の決議要件は、行使可能な議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数)、出席した株主の議決権のうち、3分の2以上が賛成することです。定款の定めにより、定足数は3分の1以上にまで緩和でき、決議要件は、定めた割合までの加重が認められます。
特別決議の決議事項は、以下のとおりです。
事業譲渡の承認
定款の変更
解散
解散した株式会社の継続
役員の責任の一部免除
累積投票取締役・監査等委員である取締役・監査役の解任
新設合併契約・新設分割計画・株式移転計画の承認
吸収合併契約・吸収分割契約・株式交換契約の承認
株式の併合
現物配当
譲渡制限株式の買取
全部取得条項付種類株式の取得
特定株主からの自己株式の取得
一般承継人への株式売渡請求
非公開会社における募集株式・新株予約権の発行等
公開会社における特に有利な条件による新株予約権の発行等
公開会社における特に有利な払込金額による募集株式の発行等
特殊決議は、株主の利害や地位にきわめて重大な影響を与える可能性がある事項を決める際に適用されます(会社法第309条第3項・第4項)。[参考4]
会社法第309条第3項の特殊決議について、定足数は決まっておらず、議決権を行使できる株主の半数以上(頭数要件)の賛成があり、かつ、頭数となる株主のうち3分の2以上が賛成すると可決されます。[参考4]定款の定めにより、頭数の割合や決議要件の引き上げが可能です。
会社法第309条第3項の特殊決議の決議事項として、以下2点が挙げられます。
組織再編行為で公開会社の株主に対価として譲渡制限株式が交付される場合
定款変更により発行する全部の株式が譲渡制限株式になる場合
また、残余財産の分配や剰余金の配当、株主総会の議決権について、株主ごとに取り扱いが異なる旨の定款変更を行う際は、会社法第309条第4項の特殊決議が必要です。[参考4]
会社法第309条第4項の特殊決議の特殊決議は同条第3項の特殊決議よりも決議要件が厳しく、総株主(議決権のない株主も含む)の半数以上(頭数要件)の賛成があり、かつ、総株主の議決権の4分の3以上の賛成が求められます。定款の定めにより、決議要件の引き上げが可能です。[参考4]
株主総会で提案された決議事項について、すべての株主が書面または電磁記録で同意の意思表示をしている場合は、可決されたとみなして株主総会の開催を省略できます。この手続きを「書面決議(みなし決議)」といいます。
書面決議は、株主が多い上場企業などでは実現が難しいものの、少人数の企業では比較的実施しやすいのが特徴です。
書面決議を実施した場合、決議の日から10年間は、書面または電磁的記録を本店に備え置かなければいけません。株主および債権者は、企業の営業時間内であれば、備え置いた記録の閲覧などの請求が可能です(会社法第319条第2項・第3項)。[参考5]
書面決議を実施するには、株主総会の招集通知の代わりとして、株主総会提案書・同意書を株主に送付する必要があります。送付方法は、郵送または電磁的方法のいずれでも問題ありません。
各書類にフォーマットはありませんが、株主総会の目的事項や回答日を明記するのが望ましいです。株主全員の同意が得られた日が書面決議の成立日のため、日付は慎重に設定しましょう。
株主総会招集通知について理解を深めたい方は、以下の記事をご参照ください。
関連記事:株主総会招集通知とは?記載事項やいつまでに発送すべきか等を解説
株主総会決議について以下のような事実が発覚した場合、企業の当該行為が無効になる恐れがあるため注意が必要です。
議事録に株主総会を開催した記録があるが、実際は開催されていない場合
株主総会の手続きに著しい瑕疵があり、開催されたといえない場合
具体的には、株主総会決議の取消・無効・不存在の確認の訴えによって、株主総会決議の適法性が争われます(会社法第830条第1項・2項、同法第831条)。[参考6][参考7]訴訟になった場合、対応に手間と時間がかかるほか、費用も発生します。
訴えが認められて取消・無効・不存在が確定した場合、これまでの企業運営の有効性も問われる恐れがあるでしょう。そのため、企業は、各決議について適切な手続きを確保することが重要です。
また、株主総会では、株主総会議事録の作成・保管が会社法第318条で義務付けられています。[参考8]
株主総会議事録については、以下の記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。
関連記事:株主総会議事録とは?必要性や記載事項・作成時のポイントを解説
株主総会の決議事項とは、企業運営に関して、株主総会で決議する事項のことです。株主総会の決議事項は主に会社法で定められており、決議方法は、法令および定款の定めに基づいて普通決議・特別決議・特殊決議のいずれかに区別され、決議ごとに定められている定足数と決議要件を満たすと承認されます。
株主総会に瑕疵がある場合、決議の有効性が争われる可能性があり、結果として企業運営に影響を及ぼすことも考えられるでしょう。そのため、企業は、株主総会決議を適正に実施することが重要です。
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本記事の記述は一時的情報であり、特定の事案への法的助言ではありません。
吉田 修平
株式会社Legalscape コーポレート本部法務 Legal Counsel / 弁護士
2017年に弁護士登録後、インハウスローヤーに転身。金融機関で銀行法務・新規事業開発に携わり、WeWork Japan にてビジネス法務・コンプライアンス体制構築を主導。2024年3月Legalscapeに入社。法務コンプライアンスの知見をプロダクト開発に活かし、リーガルイノベーションの最前線を支える。
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