
業務委託契約書には、収入印紙が必要となる場合があります。請負や継続的な委託契約を締結する際は、該当する文書を作成し、契約内容や金額に応じて印紙税を支払わなければいけません。
しかし、業務委託契約書の収入印紙の金額は細かな規定があるため、混乱する方もいるでしょう。
本記事では、業務委託契約書に収入印紙は必要か否かについて紹介します。金額や負担者もケース別に解説するので、ぜひ参考にしてください。
業務委託契約書は、様式によっては収入印紙が必要です。業務委託は「請負」「委任」「準委任」の3分類が存在し、それぞれ契約の目的が異なります。
分類によって契約書の様式が分かれており、どのような条件下で収入印紙が必要なのかという点も異なるため注意が必要です。
ここでは、業務委託契約書に収入印紙が必要なケースを契約書の様式ごとに解説します。
請負契約とは「仕事の完成」を目的とした契約です。たとえば、建築工事においては「新築住宅の完成」、製造現場では「製品の完成・納品」を求める契約を指します。
請負契約において、納品物の有形・無形を問いません。警備や機械保守といった無形物も含まれます。
請負契約を締結する際に用いる様式は「2号文書」です。2号文書の締結後、受託者は期日までに成果物を納品し、委託者は確認のうえ対価を支払う義務を負います。[参考1]
継続的な取引がある「委任契約」や「準委任契約」の業務委託契約書は、7号文書に該当します。委任契約と準委任契約の主な違いは以下のとおりです。
委任契約:法律行為の委託
準委任契約:事実行為の委託
委任契約は、弁護士への訴訟依頼や、税理士への確定申告の依頼など、法律行為を委託する場合に締結するものです。一方、法律行為に該当しない事務処理やシステム開発、コンサルティングなどは準委任契約に該当します。
ただし、契約内容によっては2号文書に該当する場合もあるため注意が必要です。[参考2]
業務委託契約書に収入印紙が不要なケースは以下のとおりです。
委任契約や準委任契約の期間が3カ月未満の場合
2号文書の契約金額が1万円未満の場合
電子契約で締結する場合
委任契約や準委任契約の契約期間が3カ月未満の場合は、基本的に収入印紙は必要ありません。また、2号文書締結時の契約金額が1万円未満の場合も、収入印紙は不要です。
ただし、委任契約・準委任契約であっても、3カ月を超える「継続的取引」に該当する場合は、収入印紙が必要になるため注意が必要です。
一方、電子契約は課税文書に該当しないため、契約内容や金額を問わず、収入印紙は必要ありません。
ここでは、業務委託契約書に必要な収入印紙の金額について解説します。
請負に関する契約書を締結する場合の収入印紙の金額(印紙税額)は以下のとおりです。
契約書記載の契約金額 | 収入印紙の金額 |
|---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円超え、200万円以下 | 400円 |
200万円超え、300万円以下 | 1,000円 |
300万円超え、500万円以下 | 2,000円 |
500万円超え、1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円超え、5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円超え、1億円以下 | 6万円 |
1億円超え、5億円以下 | 10万円 |
5億円超え、10億円以下 | 20万円 |
10億円超え、50億円以下 | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載なし | 200円 |
※掲載情報は、2025年11月18日時点のものです。情報は変更される可能性があるのでご注意ください。[参考1]
請負に関する契約書(2号文書)を締結する場合は、上記のとおり、記載されている契約金額に応じて印紙税額が異なります。
ただし、一定期間の建設工事の請負に関するものについては、印紙税額は別に定められているため注意が必要です。
工事請負契約書の印紙については、こちらの記事で詳しく解説しているので、気になる方はぜひご覧ください。
関連記事:工事請負契約書に印紙は必要?不要なケースや軽減措置について解説
継続的取引に関する契約書(7号文書)の場合、収入印紙の金額は一律4,000円です。継続的取引に該当する要件は以下のとおりです。
契約期間が3カ月以上
契約期間にかかわらず更新の定めがある
たとえば、契約書に「1カ月あたり1万円、2025年1月より1年間」と明確に記載がある場合は、7号文書に該当します。7号文書では、取引内容は問いません。
また、請負であっても、2つ以上の取引を継続して行うための契約を締結する場合は「継続的取引の基本となる契約書」に該当する場合があります。[参考2]
以下の記事では、準委任契約書の印紙について詳しく解説しています。契約内容や金額についてより正しく理解したい方は、ぜひ併せてご覧ください。
関連記事:準委任契約に印紙は必要?金額や罰則、請負契約についても解説

業務委託契約書における印紙税は、課税文書を作成した人が負担するのが原則です。印紙税法では「課税文書の作成者は印紙税を納める義務がある」と定めています。ただし、課税文書を共同で作成した場合は、印紙税を連帯で納める義務を負います。
たとえば、契約書を2部作成する際、双方を原本として保管する場合は「共同作成」として両者が印紙税を支払わなければいけません。ただし、1通を原本、片方を複写とする場合は、課税文書を作成した側が印紙税を負担します。
契約書締結時には、印紙税をどちらが負担するかを明確に定めておくことが重要です。[参考3]
業務委託契約書の印紙を貼る位置は、法律による定めがありません。一般的には、書類の左上に貼りますが、著名欄の横に貼付する場合もあります。印紙を2枚使用する場合は、上下または左右に並べて貼りましょう。
収入印紙を貼る際は、再利用を防ぐために「消印」が必要です。書類と印紙をまたがるように、印鑑を押してください。使用する印鑑は、社印や認印のほか、インク式のシャチハタでも問題ありません。
印鑑の代わりにボールペンで署名を記入する方法も有効ですが「印」だけでは無効になるため注意が必要です。
署名を消印代わりにする場合は、必ず氏名や屋号を記載しましょう。なお、斜線や二重線、鉛筆・シャープペンシルといった消えやすい筆記用具による署名は無効です。
収入印紙が必要にもかかわらず、貼付を忘れると過怠税が課されるため注意が必要です。ここでは、印紙の貼り忘れによるリスクと対処法を解説します。
課税文書に印紙を貼り忘れると、印紙税額とその2倍に相当する金額の過怠税が発生します(印紙税法第20条)。
たとえば、請負に関する契約書(2号文書)の記載金額が1億円を超え、5億円以下の場合、印紙を貼り忘れると、印紙税の2倍である20万円の過怠税が課されます。
20万円に通常の印紙税も支払わなければならず、最終的には3倍の金額の支払い義務が生じるため注意が必要です。[参考3][参考4]
課税文書に印紙を貼り忘れたものの、税務調査等で指摘を受ける前に気付き、自己申告した場合は、過怠税が減額されます(印紙税法第20条2項)。
自ら税務署に申告した場合の過怠税は、印紙税の10%です。たとえば、通常の印紙税が10万円の場合は、本来貼付すべき印紙代と合わせて11万円の支払いに抑えられます。[参考3]
業務委託契約書に印紙を貼り忘れても、契約が無効になることはありません。印紙の貼り忘れに関するペナルティは印紙税に関するものだけで、契約は有効のままです。

業務委託契約書が複数枚存在する場合は、契約内容の真正性を証明したり、改ざんリスクを防止したりする目的で、割印を押すのが一般的です。
割印を押す場合は、書類をズラして重ね、各部にまたがるように印影を残します。すべての書類をまたげない場合は「1枚目と2枚目、2枚目と3枚目」に押印しましょう。
割印に使用する印鑑は法人名が施された印鑑を使うのが一般的ですが、法的な定めはなく、認印でも問題ありません。
ここでは、業務委託契約書の印紙税を抑える方法を紹介します。契約内容問わず収入印紙が不要になる方法も解説するので、ぜひ参考にしてください。
請負契約(2号文書)の場合は、契約金額を税抜で記載することで印紙税額を抑えられます。国税庁のWebサイトにて「取引に当たって課されるべき消費税額等が明らかとなる場合には、その消費税額等は印紙税の記載金額に含めない」と明記されています。
たとえば、業務委託契約書(2号文書)の契約金額に「1,100万円」と記載されている場合の印紙税額は2万円です。一方「1,100万円(税抜金額100万円)」と記載している場合は、税抜金額の1,000万円のみが課税対象となり、印紙税を1万円に抑えられます。
ただし「税込」「消費税等10%を含む」といった記載では、上記の対応は認められません。節税を目的とする場合は、消費税を含む金額であること・消費税額を明記することが重要です。[参考5]
契約書の原本を減らせば、業務委託契約書の印紙税を抑えられます。収入印紙の貼り付けが必要なのは原本のみであり、複写には貼付義務がありません。契約書が2部以上ある場合、いずれか一方のみを原本とすることで、印紙税を節約できます。
ただし、原本を減らすと紛失のリスクが高まり、訴訟における証拠として不十分とみなされる可能性がある点に注意が必要です。
また、複写を原本の代わりとし、契約の成立を証明するために発行した場合は課税文書とみなされます。課税文書は収入印紙が必要になるため、正しく理解しておきましょう。[参考6]
電子契約とは、インターネット上で電子署名を付与して契約を締結する方法です。近年、ペーパーレス化の促進により、電子契約を導入する企業が増加傾向にあります。
印紙税の対象は紙ベースの契約書のみであり、電子契約書は課税文書に該当しません。そのため、電子契約を用いれば収入印紙の貼付義務が発生せず、印紙税もかかりません。
こちらの記事では、電子契約書における印紙の可否を、法的根拠に基づき解説しています。気になる方はぜひご覧ください。
関連記事:電子契約で印紙はなぜ不要?法律に基づく根拠と注意点を解説
業務委託契約書を締結する場合、様式によっては収入印紙の貼付が必要です。支払うべき印紙税額は、契約内容や金額によって異なります。収入印紙の貼付が必要にもかかわらず貼り忘れると、場合によっては高額な過怠税が課されるため注意が必要です。
しかし、業務委託契約書の収入印紙は印紙税をはじめ、法律によるさまざまな規定が設けられており、すべてを正しく把握するのは難しいかもしれません。
業務委託契約書を適切に作成したい、社内で法令チェックができる体制を整えたいと考えている場合は「Legalscape」の活用がおすすめです。Legalscapeは、知りたい法情報に瞬時にアクセスできるシステムです。
書籍・雑誌・判例に加えて、官公庁や公的団体の最新の発表資料までを網羅的にカバーしており、4,000冊以上のなかから、知りたい情報をAIが要約します。法令や引用文献等への原典を辿ることができ、今読んでいる文献・法令等を引用する他の文献・法令等を一覧できる点も魅力です。
業務委託契約書の作成における悩みを抱えている方は、ぜひ「Legalscape」の導入をご検討ください。

本記事の記述は一時的情報であり、特定の事案への法的助言を行うものではありません。
参考2:No.7104 継続的取引の基本となる契約書|国税庁
吉田 修平
株式会社Legalscape コーポレート本部法務 Legal Counsel / 弁護士
2017年に弁護士登録後、インハウスローヤーに転身。金融機関で銀行法務・新規事業開発に携わり、WeWork Japan にてビジネス法務・コンプライアンス体制構築を主導。2024年3月Legalscapeに入社。法務コンプライアンスの知見をプロダクト開発に活かし、リーガルイノベーションの最前線を支える。
業務効率化への第一歩、
体験してみませんか?
今すぐ無料で使う
プロダクトの資料や機能のご質問など
ぜひお気軽にお問い合わせください
資料請求・お問い合わせ