
売買契約書を不備なく作成したいなら、印紙の貼り方や割印のルールを正しく理解しておくことが重要です。特に中小企業の担当者や契約書を扱う実務担当者の方にとっては、印紙の貼り忘れや消印漏れが過怠税につながるリスクは見逃せないポイントです。
本記事では、売買契約書に必要な収入印紙の貼付方法や割印の押し方、貼り忘れた場合のペナルティをわかりやすく解説します。あわせて最新の法情報を効率よく確認できる「Legalscape」の活用方法も紹介します。ぜひご覧ください。
売買契約書が「課税文書」に該当する場合、収入印紙(以下、印紙)が必要です。これは印紙税法により、一定の契約書には税が課されるためです。
課税文書にあたるかどうかは、以下の3点を満たしているかを確認します。
印紙税法別表第1に定める20種類の文書に該当し、課税事項が記載されていること
当事者間でその課税事項を証明する目的で作成されていること
非課税文書に該当しないこと
売買契約書の場合、該当する文書は主に「1号文書」または「7号文書」です。不動産売買契約書は土地・建物の譲渡を証明するため1号文書に分類され、航空機・船舶など高額資産の契約も1号文書に含まれます。
一方で、同じ当事者間で継続的に売買を行う場合に締結する「売買取引基本契約書」は、継続取引を前提とするため、7号文書に区分されます。[参考1][参考2]
第7号文書に該当する「売買取引基本契約書」は、1通につき4,000円の印紙が必要です。ただし取引期間が3カ月以内で、更新の定めがない契約は、非課税となる例外があります。
一方で、不動産や船舶・航空機といった資産の譲渡を証明する契約書に該当する第1号文書は、記載された契約金額によって印紙税額が段階的に変わります。
以下は通常の印紙税額と、不動産売買契約書に適用できる軽減税額を並べた一覧です。
契約金額 | 通常の印紙税額 | 軽減措置(不動産売買契約書) |
|---|---|---|
1万円未満 | 非課税 | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 | 200円 |
10万円超50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円超10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円超50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円超 | 60万円 | 48万円 |
※掲載情報は、2025年11月19日時点のものです。情報は変更される可能性があるのでご注意ください。
不動産売買契約書は同じ第1号文書でも、軽減措置に数万円単位で差が出ることもあるため、軽減制度の適用可否を必ず確認すべきです。
なお、不動産売買契約書の印紙税軽減措置が適用されるのは、2014年4月1日から2027年3月31日に作成された契約書で、記載金額が10万円を超えるものです。期間外に作成された契約書には軽減は適用されないため、作成日の確認も必ず行いましょう。[参考2][参考3]
売買契約書の印紙税を誰が負担するかは法律で明確に決められていません。 売り手・買い手の話し合いによって負担方法を自由に決められる仕組みです。
印紙税法では「課税文書を作成した人に印紙税を納める義務がある」とされ、さらに「複数人で文書を作成した場合は連帯して納める」と定められています。しかし、これはあくまで納税義務者を示すもので、実際に誰が印紙代を支払うかは規定していません。
そのため、現場では双方が納得できる形で負担方法を取り決める運用が一般的です。
実務では、売り手と買い手が折半するケースが多く、公平性の面からも採用しやすい方法です。売買契約書を2通作成する場合は、それぞれが自分の保管分に貼る印紙を負担するという運用も広く行われています。[参考4]

必要な印紙の金額は契約金額や課税文書の種類によって異なるため、事前の確認が欠かせません。印紙は郵便局や法務局で購入でき、コンビニでは一般的に200円印紙のみが販売されています。
契約書が完成し双方が合意したら、印紙を契約書に貼ります。印紙の向きに厳密なルールはありませんが、額面が読み取りやすい縦向きがよいでしょう。水で湿らせて貼り、ホッチキスなどで傷つけないよう注意してください。
売買契約書が課税文書に該当するにもかかわらず、印紙を貼り忘れた場合は「過怠税」というペナルティが課されます。貼付がない場合、作成者は本来の印紙税額に加えて、その2倍相当の額を過怠税として支払う義務が生じます。
つまり、合計で印紙税額の3倍を徴収される仕組みです。
なお、貼付忘れを自主的に税務署へ申し出た場合は、状況により過怠税が印紙税額の1.1倍に軽減されるケースもあります。[参考4][参考5]
印紙を貼り忘れたとしても、売買契約書そのものの効力が無効になることはありません。印紙税は「契約書の内容」に対して課されるものではなく、「課税文書を作成した行為」に対して課される税金のため、契約自体の有効性には影響しないためです。
印紙を貼らなかった場合に問題となるのは、印紙税法に違反し、納めるべき税金を支払っていない点であり、その結果として過怠税が徴収されるという仕組みです。
売買契約書に貼付した収入印紙には、契約書と印紙の両方にまたがる形で割印(消印)を押す必要があります。印紙の再利用を防ぎ、契約書を正式な課税文書として成立させる重要な手続きです。
割印は印影が鮮明であることが求められるため、印鑑マットを敷き、朱肉は均等に適量をつけて押すことが基本です。印鑑は両手で支え、「の」の字を描くように軽く揺らしながら押すと、印影がきれいに残ります。
契約書の印紙割印については、以下の記事で解説しているので、ぜひご覧ください。
関連記事:契約書に印紙貼付や割印は必要?位置や押し方、双方で必要かを解説
収入印紙には印紙税法第8条2項により割印を押すことが求められており、これを怠ると過怠税の対象になります。割印が認められるためには、契約書と印紙にまたがる形で印鑑が押され、印影がはっきり見えることが必要です。
消印漏れが発覚した場合、税務署からの指摘により、本来の印紙税額に加えてその額と同額の過怠税が徴収される場合があります。さらに故意に消印しなかったと疑われると税務調査の対象となる可能性もあり、印紙の割印は確実に行うことが重要です。[参考4]
収入印紙の割印は必ずしも印鑑である必要はなく、署名でも有効です。印紙税法では割印に使用する手段を限定していないため、契約書と印紙にまたがる形で署名が明確に記されていれば、再利用防止の機能を果たすものとして認められます。
重要なのは、印紙と契約書双方にまたがって署名が記載されていることであり、判読できる形で書かれていれば法的にも問題ありません。[参考6]
割印に用いる印鑑や署名は、契約書の作成者本人のものである必要はありません。印紙税法上、割印の目的はあくまで「印紙の再利用防止」であり、誰の印鑑か署名かは問わないためです。
そのため同席している関係者の印鑑や署名であっても、印紙と文書にまたがって押印されていれば割印として使用しても問題ありません。[参考6]
売買契約書は、印紙の貼付や割印など細かなルールを守ることで、初めて適切な課税文書として成立します。貼り忘れや消印漏れは過怠税につながるため、作成時には必ず最新の法令や実務ポイントを確認することが重要です。
しかし複数の法情報を調べるのは手間がかかり、内容が複雑でわかりにくい場合もあります。そのようなときに役立つのが「Legalscape」です。
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本記事の記述は一時的情報であり、特定の事案への法的助言を行うものではありません。
参考1:No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断|国税庁
参考2:印紙税額の一覧表(第1号文書から第20号文書まで) | 国税庁
吉田 修平
株式会社Legalscape コーポレート本部法務 Legal Counsel / 弁護士
2017年に弁護士登録後、インハウスローヤーに転身。金融機関で銀行法務・新規事業開発に携わり、WeWork Japan にてビジネス法務・コンプライアンス体制構築を主導。2024年3月Legalscapeに入社。法務コンプライアンスの知見をプロダクト開発に活かし、リーガルイノベーションの最前線を支える。
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