
工事請負契約書とは、工事の完成と対価を約束する際に取り交わす契約書のことです。工事請負契約書を締結する際、契約金額に応じて、印紙の貼付は義務です。
ただし、場合によっては不要だったり、条件に応じて軽減措置を受けられたりするため、正しく理解しておく必要があります。
本記事では、工事請負契約書における印紙の必要性や不要なケースを紹介します。印紙税額や軽減措置、金額を抑える方法なども解説するので、ぜひ参考にしてください。
工事の完成と、それに伴う報酬の支払いを約束する「工事請負契約書」には、原則として印紙の貼付が必要です。工事請負契約書は印紙税法で課税文書の一つである「第2号文書」に分類されており、契約金額に応じて印紙税を納めなければいけません。
ただし、印紙が必要か否か、印紙税の金額は工事請負契約書に記載される契約金額によって異なります。法律を正しく理解したうえで、適切な対応が求められます。[参考1]
契約書全体の収入印紙について詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。
関連記事:契約書の収入印紙はどちらが負担?金額や契約書の種類について解説
工事請負契約書には原則印紙が必要ですが、不要なケースもあります。ここでは、工事請負契約書に印紙が不要なケースを具体的に紹介します。
工事請負契約書の契約金額が1万円未満の場合、印紙は必要ありません。第2号文書に分類される工事請負契約書に印紙税が課されるのは、契約金額が1万円を超える場合のみです。
ただし、実際の契約金額が1万円未満であっても、契約書の「契約金額欄」に記載がない場合は、200円の印紙を貼付する必要性が生じるため注意が必要です。[参考2]
工事請負契約書における印紙税は、原則として収入印紙で納付します。ただし、以下の場合は収入印紙ではなく、税印のなつ印や書式表示などでの納付が可能です。
印紙税相当額の金銭を支払い、納付所轄税務署長から税印のなつ印による承認を得る
印紙税納付計器の所轄税務署長の承認を受け、印紙税を金銭で支払う
所轄税務署長の書式表示の承認を得る
事前に所轄税務署の署長の承認を得ることで、金銭での納付が可能です。ただし、税印のなつ印や印紙税納付計器に対応している場所は限られています。
また、書式表示はその課税文書が毎月継続して作成されるといった一定条件下でのみ認められている点を理解しておきましょう。[参考3]
工事請負契約書を電子契約で締結する場合は、印紙を貼り付ける必要はありません。印紙税法で定める「課税文書」は紙ベースの契約書を指し、電子データで取り交わす電子契約書は該当しないためです。
電子契約を導入すれば、工事請負契約書のほか、契約書全般の印紙代を節約できるだけでなく、紙の保管コスト削減も図れます。また、電子契約は割印や署名も不要で、契約締結における手間を軽減できる点も魅力です。[参考4]
工事請負契約書に印紙を貼る場合、金額は契約書記載の「契約金額」によって異なります。以下に工事請負契約書に貼る印紙税額をまとめました。
契約書記載の契約金額 | 収入印紙の金額 |
|---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円超え、200万円以下 | 400円 |
200万円超え、300万円以下 | 1,000円 |
300万円超え、500万円以下 | 2,000円 |
500万円超え、1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円超え、5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円超え、1億円以下 | 6万円 |
1億円超え、5億円以下 | 10万円 |
5億円超え、10億円以下 | 20万円 |
10億円超え、50億円以下 | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載なし | 200円 |
※掲載情報は、2025年11月19日時点のものです。情報は変更される可能性があるのでご注意ください。
工事請負契約書を発行する際は、契約金額を確認したうえで、適切な印紙を貼り付けましょう。[参考1]

「建設工事請負契約書」の場合は、軽減措置を受けられる可能性があります。建設工事請負契約書とは、建設工事に特化した場合に締結される工事請負契約書の一種です。
以下の要件に該当する場合は、軽減措置が適用されます。
建設に関する工事請負契約書であること
契約金額が100万円を超えること
2014年4月1日から2027年3月31日までの間に作成されること
軽減措置が適用された場合の印紙税額は以下のとおりです。
契約書記載の契約金額 | 収入印紙の金額 |
|---|---|
100万円超え、200万円以下 | 200円 |
200万円超え、300万円以下 | 500円 |
300万円超え、500万円以下 | 1,000円 |
500万円超え、1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円超え、5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円超え、1億円以下 | 3万円 |
1億円超え、5億円以下 | 6万円 |
5億円超え、10億円以下 | 16万円 |
10億円超え、50億円以下 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 48万円 |
※掲載情報は、2025年11月19日時点のものです。情報は変更される可能性があるのでご注意ください。
なお、建設工事請負契約書の軽減措置が適用される期間は、令和6年税制大綱によって、当初の「2024年3月31日まで」から「2027年3月31日まで」に延長されています。[参考5]
工事請負契約書に印紙を貼り忘れると、金銭的なペナルティが科されたり、最悪の場合は刑事罰の対象になったりする可能性があるため注意が必要です。
ここでは、工事請負契約書に印紙を貼り忘れるとどうなるのかを解説します。
工事請負契約書に印紙は必要ですが、貼り忘れたとしても契約が無効になることはありません。印紙税の納付の有無が契約自体に影響を及ぼすことはないためです。
貼り忘れた場合は、速やかに所轄の税務署に申告してください。
課税対象の工事請負契約書に印紙を貼らなかった場合は、印紙税額とその2倍、つまり合計3倍に相当する金額の過怠税が徴収されます。
たとえば、契約金額が「1,000万円超え、5,000万円以下」の場合の印紙税は2万円ですが、印紙を貼り忘れると6万円の支払い義務が生じます。契約金額が大きいほど過怠税も高額になるため注意が必要です。
ただし、貼り忘れても税務調査より前に自己申告した場合は、印紙税額の10%まで過怠税の負担を軽減できます。印紙税が2万円の場合、支払うべき金額は2.2万円まで抑えられます。
なお、印紙を貼付する場合は再利用防止のための消印が必須です。消印忘れもペナルティの対象となり、該当の印紙税額に相当する過怠税が科されるため注意してください。[参考4][参考6]
工事請負契約書における印紙税を免れるために故意に契約金額を偽ったり、不正行為によって還付を受けたりすると、悪質と判断され刑事罰の対象になります。刑事罰として裁かれると、3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科される可能性があります。
また、契約金額が高額で印紙税額の3倍が100万円を超える場合には、状況によって「印紙税額の3倍を限度」に罰金を科すことが可能です。
なお、刑事罰は過怠税とは別に科されるため、経済的損失リスクがより高くなります。企業の社会的信用を低下させる要因にもなるため、故意に契約内容を偽るといった悪質な行為は避けましょう。[参考4]
工事請負契約書の印紙税は、工夫次第で節約が可能です。ここでは、工事請負契約書の印紙を節約する3つの方法を紹介します。
契約金額を税抜で記載すれば、印紙税を節約できる可能性があります。第2号文書は、作成時に消費税・地方消費税の金額が区分記載される文書です。そのため、取引で生じる消費税額等が明らかな場合、消費税分は印紙税の記載金額に含めないとされています。
たとえば、契約金額が110万円(税込)の場合、通常は400円の印紙税がかかります。しかし「契約金額110万円(うち消費税額等10万円)」と記載すれば、印紙税額を200円に抑えることが可能です。[参考7]
設計と建設に関する契約を結ぶ場合、別々の契約書を発行すると、それぞれに印紙税がかかります。しかし、設計請負契約を建設請負契約書のなかに盛り込み、同じ書類で契約を締結すれば、印紙税の節約が可能です。
また、設計請負契約は軽減措置の対象外ですが、建設請負契約は適用範囲内です。設計請負契約を建設請負契約書に盛り込めば、両者とも軽減措置の適用を受けられます。
たとえば、設計が1,000万円、建設が1億円の契約を締結する場合、印紙税は通常は8万円(2万円+6万円)です。しかし、契約を一つにまとめると、契約金額1億1,000万円すべてが軽減措置の対象となり、印紙税を6万円に抑えられます。[参考8]
工事請負契約書の印紙代を節約するなら、電子契約を導入するのが有効です。電子契約は印紙が不要であり、印紙税の納付義務もありません。工事請負契約書と取り交わす機会が多い企業の場合は、大幅な印紙税の削減効果を得られます。
また、電子契約は締結の手間を省けるほか、契約書の保管コストもかかりません。
電子契約における印紙については、こちらの記事で詳しく紹介しています。法律に基づく根拠も解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
関連記事:電子契約で印紙はなぜ不要?法律に基づく根拠と注意点を解説
工事請負契約書を発行する際は、原則として印紙の貼付が必要です。印紙税額は契約金額によって異なり、200円〜60万円と大きな差があります。
印紙を貼り忘れると、過怠税を徴収されたり、最悪の場合は刑事罰が科されたりする可能性があります。そのため、工事請負契約書を発行する際には、印紙税法をはじめ、法律に関する正しい理解が必要です。
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本記事の記述は一時的情報であり、特定の事案への法的助言を行うものではありません。
参考2:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁
参考5:No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁
吉田 修平
株式会社Legalscape コーポレート本部法務 Legal Counsel / 弁護士
2017年に弁護士登録後、インハウスローヤーに転身。金融機関で銀行法務・新規事業開発に携わり、WeWork Japan にてビジネス法務・コンプライアンス体制構築を主導。2024年3月Legalscapeに入社。法務コンプライアンスの知見をプロダクト開発に活かし、リーガルイノベーションの最前線を支える。
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