
取締役会設置会社は、取締役会の設置が会社法で義務付けられている、または任意で設置している株式会社を指します。取締役会の役割は、重要業務の執行・取締役による職務執行の相互監督・代表取締役の選定および解職です。
取締役会の設置が任意の会社は、取締役会設置会社にメリットとデメリットの両方を理解したうえで、設置の必要性を慎重に判断することが重要です。
本記事では、取締役会設置会社と取締役会非設置会社の違いや、それぞれのメリット・デメリットなどを詳しく解説します。
取締役会設置会社は、取締役会の設置が会社法で義務付けられている、または任意で設置している株式会社を指します(会社法第2条7号)。取締役会設置会社を任意で設置できるのは、定款で取締役会の設置を定めている株式会社です。
取締役会設置会社は、3名以上の取締役を選任する必要があり、うち1名を代表取締役として選定し会社を代表する権限を持たせることが一般的です。
また、取締役会設置会社には、原則として1名以上の監査役が必要です。監査役は、株式会社における取締役の経営や財務状況などを監査・監督する役割を担います。[参考1]
会社法第327条において、取締役会の設置が義務付けられているのは、以下の株式会社です。
公開会社
監査役会設置会社
監査等委員会設置会社
指名委員会等設置会社
いずれかに該当する株式会社は、取締役会を設置しなければいけません。
取締役会の役割や設置のメリットについては以下の記事で解説していますので、参考にしてください。株主総会との違いも説明しています。
関連記事:取締役会とは?役割や設置のメリット、株主総会との違いを解説
取締役会非設置会社とは、取締役会を設置しない会社を指します。ただし、取締役会非設置会社という用語は会社法による定めがなく、正規の名称ではありません。
取締役会設置会社と取締役会非設置会社の違いは、以下のとおりです。
取締役会設置会社 | 取締役会非設置会社 | |
|---|---|---|
取締役の人数 | 3名以上 | 1名以上 |
監査役の設置 | 原則必要 | 任意 |
業務執行方法の決定 | 取締役会の決議 | 取締役の過半数で決定 |
取締役の業務執行権限 | 原則として代表取締役のみあり | あり |
株主総会の権限 | 会社法・定款に定められた事項 | 会社に関する一切の事項 |
上場の可否 | いくつかの要件を満たせば可能 | なし |
取締役会非設置会社には1名以上の取締役が必要ですが、代表取締役の選任は任意です。代表取締役を選ばない場合は、取締役全員が代表権を有します(会社法第349条第1項・第2項)。[参考2]
取締役会非設置会社は上場できませんが、取締役会設置会社は、一定の要件を満たせば上場できます。[参考3]

取締役会は、企業の重要な意思決定と健全な運営のための重要な機関です。取締役会の設置を検討する上で、その役割を知ることは、健全な企業統治(ガバナンス)の構築に不可欠です。
本章では、取締役会の代表的な3つの役割について解説します。
業務執行とは、会社経営やその他の事務処理のことです。業務執行の権限を有するのは多くの場合は代表取締役ですが、以下のような重要業務の執行には取締役会の決議・承認が必要です(会社法第362条第4項)。[参考4]
重要な財産の処分および譲受
多額の借財
支配人その他の重要な使用人の選任および解任
支店その他の重要な組織の設置、変更および廃止
社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
内部統制システムの構築に関する決定
定款の定めに基づく役員または会計監査人の会社に対する責任の免除
また、以下の事項も、取締役会による決議を必要とします。
譲渡制限株式の譲渡・承認(会社法第139条)
株式の分割(会社法第183条第2項)
所在不明株主の株式の競売等に代えて会社自らが株式を買い取る(会社法第197条第3項、第4項)
[参考5][参考6][参考7]
取締役会には、取締役が職務を執行しているか監督する役割があります。
具体的には、日々の意思決定を誤ることなく、取締役会で決議した内容に従って業務を正しく遂行できているかの確認が必要です。取締役が法令に違反した場合、取締役会は、改善に向けた職務執行の見直しを指示しなければいけません。
取締役会で自らの職務執行状況を3か月に1回以上報告し、複数名の取締役が相互に監督し合うことで、透明性の高い会社経営を実現できます。
代表取締役は、会社の代表として重要な権限を有しており、会社経営に大きな影響を与えうることから、取締役会による選定・解職が認められています。
取締役会の決議で、出席した取締役の過半数以上の同意があった場合、代表取締役の選定・解職が可能です。ただし解職の場合、代表取締役は特別利害関係者に該当するため、議決に参加できない点に留意が必要です。
取締役会設置会社の設置は定款自治に委ねられており、設置が義務付けられている会社以外は、原則として自由に決められます。本章では、取締役会設置会社のメリット・デメリットを紹介します。
まずは、取締役会を設置した場合の2つのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
会社の業務執行の決定に都度株主総会決議を必要とした場合、効率的な会社運営の妨げになる恐れがあります。取締役会を設置することで、株主総会の権限を会社法が規定する事項および定款に定める事項に限定でき、取締役会によるタイムリーかつ適切な意思決定を確保できます。
市場の変化や新規事業の検討といったタイムリーな判断が求められる場面において、取締役会が大きな役割を果たすでしょう。
取締役会設置会社は、取引先や顧客から信用を得やすいメリットもあります。取締役会がすべての取締役の職務を監督することから、一部取締役の独断による経営を防ぎ、適切に責務を果たせるように牽制できるためです。
社会的信用を得た結果、金融機関から融資が受けやすくなることもあります。
取締役会設置会社には多くのメリットがありますが、デメリットもあるため注意が必要です。本章では、取締役会を設置した場合に懸念される2つの事項について解説します。
取締役会は、3か月に1回以上の開催が義務付けられており、開催のたびに資料の準備や議事録の作成をしなければいけません。作成した議事録は10年間の保管が必要で、スペースの確保やファイリングの手間もかかります。
取締役会の開催には手間やコストがかかることを踏まえて、設置を判断することが重要です。
最低4名分の役員報酬が必要な点も、取締役会を設置するデメリットです。
取締役会設置会社は、原則として3名以上の取締役と1名以上の監査役を置く必要があります。会計参与を設置する場合、監査役の選出は任意ですが、報酬が発生することに変わりはありません。
起業直後などは役員報酬が資金繰りに影響する可能性もあるため、安定的な経営・利益の確保が難しい場合は、特に慎重な判断が求められます。
続いては、取締役会非設置会社のメリット・デメリットについて解説します。取締役会の設置義務がない会社は、本章で紹介する内容を参考に、設置の必要性を検討するとよいでしょう。
取締役会を設置しない場合の3つのメリットを以下で紹介します。
取締役会非設置会社の場合、少人数または一人で起業ができます。
起業のコストを最小限に抑えられるため、経営が軌道に乗るまでの迅速性を重視する場合、効率的な会社運営がしやすい方法として有効です。
取締役会非設置会社は、業務執行の決定を株主総会で行うため、株主が少人数の場合は迅速な意思決定が可能です。
一人で起業した場合は、自身の判断のみで業務執行の可否を判断できるため、個人事業主が法人成りしたケースにおいても従来通りの方法で業務を遂行できます。
取締役会を設置しない場合、役員は最低1名で問題ありません。役員報酬を抑えられる点は、取締役会非設置会社の大きなメリットといえます。
取締役会を設置しない場合の2つのデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
取締役会非設置会社には、取締役会での監査がないため、会社の利益を害する行為をした者の行動を規制できません。一部の取締役によるワンマン経営が横行した結果、事業運営に影響を及ぼすリスクがあります。
取締役会非設置会社は、株式会社でも小規模な会社というイメージを与えやすく、取引先や金融機関から信用を得にくいのが難点です。
資金調達における不安要素とみなされた結果、金融機関から十分な融資を受けられない可能性があります。
取締役会設置会社は、取締役会の設置が会社法で義務付けられている、または任意で設置している株式会社を指します。
公開会社・監査役会設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社に該当しない会社は、取締役会の設置が任意です。取締役会を設置する・しない場合のメリットとデメリットを理解したうえで、慎重に判断しましょう。
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本記事の記述は一時的情報であり、特定の事案への法的助言ではありません。
吉田 修平
株式会社Legalscape コーポレート本部法務 Legal Counsel / 弁護士
2017年に弁護士登録後、インハウスローヤーに転身。金融機関で銀行法務・新規事業開発に携わり、WeWork Japan にてビジネス法務・コンプライアンス体制構築を主導。2024年3月Legalscapeに入社。法務コンプライアンスの知見をプロダクト開発に活かし、リーガルイノベーションの最前線を支える。
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