
取締役会の決議事項とは、会社法上、取締役会での決議を必要とする事項を指します。
決議が成立するのは、原則として、決議に参加できる取締役の過半数が出席し、出席した取締役の過半数が賛成した場合です。ただし、出席要件や賛成要件が加重されている場合もあるため、企業の定款を事前に確認することが重要です。また、特別利害関係を有する取締役が議決に参加できない場合もあり、注意が必要です。
提案事項に対して、取締役全員が書面または電磁的記録で同意の意思表示をした場合は、取締役会の決議を省略できることもあります。ただし、決議を省略できないケースもあるほか、各取締役による職務執行状況の報告は省略できないため、3カ月に1回程度は取締役会を開催し、報告を行うのが一般的です。
本記事では、取締役会の決議事項に関して、具体的な内容や、報告事項・株主総会の決議事項との違いなどを解説します。
取締役会は、株式総会の決議事項を除き、企業の重要な事項についての決定権限を有します(会社法第295条第2項・第3項)。[参考1]
取締役会の決議事項とは、取締役会で決議される事項全般を指します。これには取締役会の専決事項(会社法第362条第4項)のほか、会社法の個別規定により求められる法定決議事項や定款または取締役会規則などで任意に定められた決議事項が含まれます。[参考2]
取締役会の決議で承認されるには、以下2つの要件を満たさなければいけません(会社法第369条第1項)。[参考3]
決議に参加できる取締役の過半数が出席している(定款に定めれば加重が可能)
出席した取締役の過半数が賛成している(定款に定めれば加重が可能)
決議事項について特別な利害関係がある取締役は、決議に参加できないため注意しましょう。
取締役会の役割や設置のメリット、株主総会との違いについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:取締役会とは?役割や設置のメリット、株主総会との違いを解説
取締役会の決議事項と株主総会の決議事項は、事項の重要度が異なります。取締役会では、企業に関するさまざまな事項を決議できますが、一部の重要事項は、株主総会で決議しなければいけません。
株主総会は、株式会社における最高意思決定機関として、企業の重要な事項を決定できます。取締役会は、日頃の企業運営を管理監督する立場として、事業執行に関する決定を行うのが役割です。株主総会と取締役会は役割が異なることから、決議事項に違いがあるといえるでしょう。
株主総会や株主総会議事録について理解を深めたい方は、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:株主総会とは?種類や決議事項、開催時期・流れをわかりやすく解説
関連記事:株主総会議事録とは?必要性や記載事項・作成時のポイントを解説
報告事項とは、取締役会で取締役に報告が義務付けられている事項です。各取締役は、3か月に1回以上の開催が必要な取締役会において、自己の職務執行状況を報告しなければいけません(会社法第363条第2項)。[参考4]
取締役会の決議事項と報告事項は、いずれも取締役会で取り扱う重要な事項ですが、役割が異なります。報告事項は報告のみで問題ありませんが、決議事項は、取締役会における決議が必要です。
本章では、会社法に定められる取締役会の専決事項を紹介します。いずれの事項も取締役会による決定が求められており、取締役個人への委任は、認められないため注意しましょう。
重要な財産の処分および譲受けは、企業の財産の行方を決める重要な事項のため、取締役会での決議が必要です。重要な財産が不適切に処理されることを防ぎ、株主の利益を守る役割があります。
「重要な財産」の会社法における定義はなく、当該財産の価額や保有目的、企業の総資産に占める割合などから総合的に判断するのが望ましいといえます。企業が有する金銭や不動産のほか、知的財産権や債権なども、財産に該当することを理解しておきましょう。
また、処分には、売却だけでなく取り壊しや賃貸も含まれます。譲受けに該当するのは、知的財産権や不動産の取得、賃借や技術の導入などです。
多額の借財は、企業の財産に大きな影響を与える可能性があるため、取締役会での決議が義務付けられています。借財に該当するのは、金融機関からの借入金や、債務保証などです。
「多額」に法的な定義はなく、企業規模や経営状況、借財の目的、企業における従来の取り扱いなどで判断するのが一般的です。
実務上は「資本金の○%」など、資本金や資産に対する一定の割合を定める企業も少なくありません。具体的な数値基準を定めていない企業は、借入などを行う際に、取締役会で議論・決議するのが望ましいでしょう。
支配人や、その他の重要な使用人を選任・解任する際は、取締役会での決議が必要です。
支配人とは、企業に代わって、事業に関する裁判上または裁判外の行為権限を有する人のことです(会社法第11条第1項)。[参考5]
支配人に該当するかどうかは、支店長や営業所長といった肩書や名称にかかわらず、実質的にそのような包括的な代理権(支配権)を有しているかどうかで判断されます。支配人の選任時は登記が必要なため、企業は、法人登記で支配人の設置の有無や氏名を確認するとよいでしょう。
「その他の重要な使用人」に関しても法的な定義はなく、本部長や執行役員、支店長、工場長といった役職の人物を指すケースが一般的です。肩書や名称でなく、各社員が有する権限を踏まえて判断しましょう。
支店や、その他の重要な組織の設置・変更・廃止をする際は、取締役会で決議しなければいけません。企業の組織体制に、大きな影響を与える可能性が高いためです。
「支店」とは、本店とは別に独自の営業活動を決定し、対外的な取引をなし得る営業所の実質を備えるものと解されています。。支店は設立から2週間以内の登記が必要ですが、本店や支店ではない営業所は登記事項ではありません。
「その他の重要な組織」は、支店などの工場のほか、本社の重要な部門を含むことも多いです。
企業が資金調達を目的として発行する社債は、一般に長期的な多額の資金調達に該当するため、取締役会の決議で決定しなければいけません。
社債を引き受ける者の募集に際し、取締役会が定める事項として、以下4点があります(会社法施行規則第99条第1項)。[参考6]
2名以上の募集にかかる募集事項を取締役へ委任する場合はその旨
総額の上限
利率の上限その他の利率に関する事項の要綱
払込金額の総額の最低金額その他の払込金額に関する事項の要綱
内部統制システムとは、企業の業務執行が法令に則った適正なものであることを確保するための基本体制のことです。取締役会設置会社のうち大会社に該当する企業は、内部統制システムの整備に関する事項について、取締役会で決議することが義務付けられています(会社法第362条第5項)。[参考2]
どのような体制設備が求められるかは、会社法施行規則第100条に定められています。[参考7]
取締役は自身の責任を果たせるように、企業におけるリスク管理などの体制を整えることが重要です。また、親会社と子会社で構成された企業は、グループ全体の管理体制として内部統制システムを整備することが求められます。
役員などの企業に対する損害賠償責任を、最低責任限度額まで免除することに関する事項は、取締役会による決議が必要です。役員の損害賠償責任の免除は、企業のガバナンスに直接関わる意思決定であり、個々の役員でなく、取締役会全体で議論する必要性があるためです。
取締役などの役員は、企業との委任契約によって、企業に対する忠実義務や善管注意義務を負っています。義務違反で企業に損害を与えた場合は、任務懈怠責任の発生により損害賠償責任を負わなければいけません(会社法第423条第1項)。[参考8]
基本的には、すべての株主が同意することで損害賠償責任の一部または全部を免除できますが(会社法第424条)、定款に定めていれば、取締役会の決議による免除も認められます(会社法第426条第1項)。[参考9][参考10]
これまで紹介した事項と同程度重要と判断される業務執行を決定するには、取締役会の決議が必要です。「その他の重要な業務執行」に法的な定義はないものの、以下の事項を取り扱うケースは少なくありません。
年間予算の設定・変更
年間事業計画や経営計画の策定
社内規定の制定・変更
実務上は、判断の一貫性や法的安定性を確保するため、一定の数値基準などを盛り込んだ「取締役会付議基準」を策定し、その基準に従って運用することが一般的です。設定した基準が著しく不合理でなければ、当該基準に従った運用は法的に妥当な取扱いとして認められると考えられています。
取締役会の決議は、一定の要件を満たした場合に、取締役全員が書面または電磁的記録で同意することによって省略が可能です。取締役会の決議があったとみなし、省略することを「書面決議(みなし決議)」といいます。
ただし、監査役が当該事項に異議を唱えた場合や、決議の省略について定款に定めがない場合は、決議を省略できないため注意しましょう。
また、各取締役による職務執行状況の報告は省略できません(会社法第372条第2項)。[参考11]少なくとも3カ月に1回は取締役会を開催し、適正に報告しましょう。
取締役会の決議事項とは、会社法上、取締役会での決議を必要とする事項を指します。決議に参加できる取締役の過半数が出席し、出席した取締役の過半数が賛成すると、決議が承認されます。
取締役会の決議事項は多岐にわたるため、会社法や会社法施行規則などの法令を理解した上で実務に従事することが重要です。
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本記事の記述は一時的情報であり、特定の事案への法的助言ではありません。
吉田 修平
株式会社Legalscape コーポレート本部法務 Legal Counsel / 弁護士
2017年に弁護士登録後、インハウスローヤーに転身。金融機関で銀行法務・新規事業開発に携わり、WeWork Japan にてビジネス法務・コンプライアンス体制構築を主導。2024年3月Legalscapeに入社。法務コンプライアンスの知見をプロダクト開発に活かし、リーガルイノベーションの最前線を支える。
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